2016年4月4日月曜日

この映画宣伝がすごい!2015(番外編)

こんにちは。ビニールタッキーです。

前回、『この映画宣伝がすごい!2015』というエントリを書きました。

この映画宣伝がすごい!2015(前編)
この映画宣伝がすごい!2015(中編)
この映画宣伝がすごい!2015(後編)

いわゆる海外映画が日本公開される際の「おもしろ映画宣伝」をご紹介しましたが、日々記事を収集する中でこれは本来の意味ですごい!というか、この映画宣伝は少しでも多くの人に知ってほしいぞ!という案件がいくつかありました。

ここでは(番外編)という形で個人的に気になった映画宣伝記事をご紹介します。

まずはこちらから。


肌の色がうつると差別され…ミス・ユニバース日本代表 宮本エリアナが語る差別経験 - シネマトゥデイ

” 黒人差別の歴史を「非暴力」で変革したマーティン・ルーサー・キング・Jr.牧師の実話を基にした映画『グローリー/明日(あす)への行進』スペシャルトークショーが16日、都内で行われ、「2015ミス・ユニバース・ジャパン」の宮本エリアナさんが登場。ハーフとして初の日本代表になったことで注目される彼女は、「わたしがミス・ユニバースに出場したことで『勇気をもらった』と言ってくれる人もいます。(本作から)行動することの大きさを学びました」と自身の過去を振り返った。

  現在21歳。日本人の母親とアフリカ系アメリカ人の父親の間に生まれ、「ハーフであることがコンプレックスで、ずっと自分のことが好きではありませんでした」という宮本さん。「見た目が日本人ではないということで、学校で『肌の色がうつるから、プールに入らないで』と言われたこともあります。友人がハーフであることに悩んで命を絶ってしまい、それを止められなかった自分がもどかしくて。ミス・ユニバースをチャンスと思って、その舞台で人種の問題を訴えたいと思っています」と真っすぐな視線で話す。

 さらに、宮本さんは「昨日、(キャロライン・)ケネディ(駐日米国)大使とお会いして、ケネディさんに『一緒に、何か仕事をしていきましょう』というお言葉をもらいました。わたしも行動で何か伝えていきたい」とほほ笑んだ。また、同席した国連広報センター所長の根本かおるさんが「まるでキング牧師みたい」ともらすと、宮本さんは「(ハーフの)自分を愛せるようになったので、これからもっと『こうしたいということ』を見つけたいです」と今後の夢を語った。”
ハードな過去の経験を真摯に語る宮本エリアナさん。ちなみにこの取材の後12月に行われたミス・ユニバース世界大会で惜しくも入賞は逃しましたが10位内ランクインと健闘したそうです。それにしてもカッコいいなこの写真!





続いてはこちら。インドアカデミー賞14部門受賞作品。

武井壮、仕事がない時代にインド映画に出演 - シネマトゥデイ


” タレントの武井壮が15日、都内で行われたインド映画『ミルカ』公開記念トークイベントに出席。自身の原点ともいうべき本作について語ったほか、来日したラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督から貴重なポスターをプレゼントされる一幕もあった。

 1960年のローマ五輪でメダル獲得を有望視されながらも、結果的に国民の失望の声を一身に受けることになったインド人ランナー、ミルカ・シンの壮絶な半生を描いた本作。武井は、1958年に東京の国立競技場で行われたアジア大会のシーンに、ミルカと競う日本代表選手の役で出演している。

 武井の出演シーンが撮影されたのは2012年の春。そのころの武井は「テレビに出る前で暇だった」といい、「そんなときに知人から、映画にエントリーしないかというメッセージがFacebookで来て。リアルなアスリートで、撮影が2週間できる人という条件だった。それでプロフィールを送ってみた」と明かす。

 その結果、見事出演を勝ち取った武井はインドに向かった。「貯金が1円もない状態で、マネージャーから1万円を借りたのに、両替するのを忘れてしまい、1円もなかった。仕方ないので、初日にマーケットに行って逆立ちをしながらクネクネ踊っていたら、隣にいたコブラよりも稼いだ」と笑いながら述懐した武井。結果、その芸で2万円ほど稼ぎ、事なきを得たという。

 久々の再会にメーラ監督も「武井さんにまたお会いできてうれしい。武井さんはレースのシーンをリアルに見せるために、出演者全員を引っ張ってくれて感謝しています」と感激の表情。「日本に来るということで、何か特別な贈り物を」というメーラ監督の好意により、ミルカの直筆サインが入った本作の初版ポスターをプレゼントされた武井は、「この作品に出演した後にテレビで出るようになりました。そこからほとんど休みもなく今につながっています。僕の今の道につながる最初の作品なので、チャンスをいただいた監督には感謝しています。(ポスターを)大事にします」と晴れ晴れとした顔を見せた。”
売れないタレントとインド映画の名匠の再会。お互いの感謝の言葉がグッと来ます。後に武井壮さんも語っていますがその後もミルカとは奇妙な縁があったそうです。



続いては同じインド映画でもこちらは甘酸っぱい青春映画。
リリー・フランキー「マルガリータで乾杯を!」を語る、「甘酸っぱくチャーミング」 - 映画ナタリー

”全国ロードショー中の「マルガリータで乾杯を!」。本作のトークイベントが10月29日に東京・シネスイッチ銀座にて開催され、リリー・フランキー、安藤玉恵、NPO法人ノアール理事長くましのよしひこ氏が出席した。

「マルガリータで乾杯を!」は、体は不自由だがいつも明るい少女ライラの冒険や成長、母親との絆を描いた人間ドラマ。インド人の女性監督ショナリ・ボースがメガホンを取り、ライラ役にはインドで生まれ育ったフランス人の女優カルキ・ケクランが起用された。

“障害者が経験する性への目覚めや恋愛”を主要テーマの1つとして描いた本作。障害者の性に関する情報提供などの活動を行っているくましの氏は「この映画を初めて見つけたのは1年くらい前。自分は障害者なので、こうした映画ではあらを見つけてしまいがちですが、この作品にはびっくりした」とコメントし、「2015年のあいち国際女性映画祭で監督とカルキさんにお会いしました。ご挨拶程度でしたが、自分の活動を伝えることができてよかった。カルキさんいい匂いでしたよ(笑)」と、ユーモアを交えながら当時のエピソードを披露する。

チャーミングな笑顔がライラに似ていると登壇者たちから評された安藤は、「もしもライラのような役がまわってきたら?」とMCに問われると、「いいんですか? やりたい!」と乗り気の様子。本作の感想を求められると「感動しました。嘘がないし、足りないものがひとつもない映画だなと思って。悩んだり笑ったり、ライラの表情1つひとつから彼女の心情がすごく伝わってくる」と瞳を輝かせた。

リリーは「この映画ってものすごいテンポで進んでいくけど、俳優たちに濃密な存在感があるから慌ただしく見えない。『えっ、レズ? ガン?』って、展開はまさにジェットコースタームービーなんですけど」と言い、登場人物たちの劇中には描かれていない部分の生活を想像させられたと語る。また「『マルガリータで乾杯を!』ってタイトルとこういうポスターだったら、絶対ヒュー・グラントが出てくると思うでしょう? なのにこの展開! 障害や性のタブーをテーマに選びながらも、ユーモアがちゃんと描かれていることが素晴らしいと思いますね」と、時折観客の笑いを誘いながらも、真摯な言葉選びで思いを述べた。

さらにリリーは「女性の性欲求を、甘酸っぱくチャーミングに表現している映画はすごく珍しいし新しい。障害のある人は聖人視されがちですが、車椅子に乗っていようが目が見えなかろうが、基本的な欲求はみんな持っているんだということを描いている。バイセクシャルの人も登場するから、いろいろな性意識を知るきっかけにもなりますよね」と話す。その言葉に安藤は「そう! しかもそれがすんなりと入ってくるんですよね!」と大きくうなずき、「私はトイレのシーンが好きですね。すごくぐっときた。幼なじみとキスをするところもいいな。性が描かれているところが圧倒的によかったです。表現がエグくないし、『アメリ』みたいだよって言ったらみんな観てくれると思います!」と本作の魅力を語った。”
障害者の性の話…と聞くと2016年に生きる我々にとっては色々な意味で身近な話題ですがこのようなテーマを取り扱うインド映画はやはり成熟してると感じます。リリーさんと安藤玉恵さんの感想も終始楽しそうでいい。ちなみに原題の"Margarita, With A Straw"は「障害者だとマルガリータもストローで飲まなければならない」というジョークだそうです。主演のカルキ・ケクランさんのインタビューも大変面白いのでご興味があればどうぞ。



最後は実話をベースにしたイギリス映画。

東京ディズニーリゾートで初の同性結婚式を挙げた元タカラジェンヌが幸せアピール! - シネマトゥデイ

” 2013年に東京ディズニーリゾートで同性カップルによる初の結婚式を挙げて話題になった元タカラジェンヌの東小雪と、ゲイで女装パフォーマーのブルボンヌが2日、都内で行われた映画『パレードへようこそ』のトークイベントに出席。二人仲良く、互いのパートナーを紹介し合った。

 イベント後の会見で、「今交際している人はいるんですか?」と問われたブルボンヌがまず「実はおります」と照れくさそうに彼氏の存在を告白。会見場の後ろを指差して、「そこにいます。そこにいる小さいおじさんです。5、6年くらい付き合っています」と50代の交際相手の男性を紹介。すると東も「ちなみにわたしも」とやはり会見に立ち会っていたパートナーの増原祐子さんを紹介。増原さんと二人仲良く薬指にはめた指輪をかざして幸せをアピールした。

 東は「高校2年生のとき、初めて女の子が好きだと気付きました。それまでは周り(の人)みたいに男の子を好きにならなくて、大人になったら好きになるのかなと思っていた。女の子を好きになって初めて自分は人とは違うんだと悩みました。周りには言えなかった」とかつての思いを吐露。

 その上で先日、東京・渋谷区で同性のカップルを「夫婦と同等」と認めて「パートナーシップ証明書」を発行する全国初の条例案が可決・成立したことに触れ、「渋谷区に住んでいるので本当にうれしかった。発行されるようになったらすぐにパートナーと届けに行きたい。夏から秋ごろ発行されるようなので楽しみにしています」とにっこり。増原さんとの結婚生活についても「普通の男女のカップルと変わらない生活をしているんじゃないかなと思います。法律では結婚できないけど頑張っています」と報告していた。”

別の記事でのブルボンヌさんの発言「イギリスでそういうパートナー法が出た時は、エルトン・ジョンが第1号になって話題になった。ぜひ証明書発行の第1号になってください!」にはグッときました。さすがエルトン・ジョン!そしてみなさんもご存知の通りこの後お二人は見事第1号を取得しました。このお二人はどの写真を見ても雰囲気がすごくいいですね。


ここに取り上げた映画は元々知っている作品もあればこの記事に触れるまで全く知らなかった作品もあります。ただ、全く知らない映画の記事でもイベント出演者の真摯な発言や作品に対する愛や熱意が確実にこめられていて、これは見てみたいな、と興味を抱かせてくれます。そして気付くのです。「これが本当の映画宣伝じゃないの?」と。

何も映画の内容について眉間にしわ寄せて熱弁するような映画宣伝ばかりにしろというわけではありません。ただ、出演者も、企画者も、配給会社も「これでいいのか?」「まあこれでいいや」と妥協と打算と場当たり的な感じを抱えたままで宣伝しないでほしいと思うのです。

2016年も人々を笑いと涙と悲鳴と頭痛の坩堝に叩き落とす「おもしろ映画宣伝」が多く作られると思います。そんな中でも真摯に宣伝しようとしている人たちもいるということは忘れずにいたいと思います。