2016年5月25日水曜日

宣伝が、宣伝を引き裂く―『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の受難



『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』超面白かったですね。

それまで映画を見る習慣がそれほどなかった自分が映画館に足繁く通うようになったのはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の初期作品『アイアンマン』がきっかけでした。それから毎回新作が公開されるたびに映画館に行って子どものようにはしゃぎながら見ています。特に今回のシビル・ウォーはこれまでシリーズをずっと見続けていてよかった…超楽しい…と見ている間ずっと多幸感に包まれる素晴らしい映画でした。

ところでこのシビル・ウォー、公開されるまでが本当に大変でした。
いや、映画自体は全然大変じゃなかったんです。日本国内の宣伝が、とにかく、本当に大変でした。人災的なものから偶発的なものまで宣伝に関する騒動の釣瓶撃ちで映画ファンやアメコミファンがやきもきする事態が多発したのです。本来こんなことは面白い映画に対して蛇足になってしまうのですが、後世の人達に「こんなことがあったんじゃよ」と伝えるために記録として残しておきたいと思います。

①ディズニー・スタジオ公式アカウントが失言

https://twitter.com/disneystudiojp/status/710028726902378496

\徹底比較/アイアンマンとキャプテンはココが違う!【寝つき編】

 ◆アイアンマン:悪夢にうなされがちでなかなか眠れません。
 ◆キャプテン:70年間も眠れたんだから寝つきがいいハズ。

 #シビルウォー #キャプテンアメリカ

シビル・ウォーの宣伝ということでツイッターのアンケート機能を使ったキャンペーンを行っていた公式アカウントですが…まあリンク先のメンション欄を見てもらえばわかりますが「お前ウィンター・ソルジャー見てねえだろ」の大合唱です。

ディズニーのツイッターアカウントは失言で有名なので今更という感じもしますが初っ端の公式からこんな感じでシビル・ウォーの宣伝は暗雲が立ち込め始めていました。


②米倉涼子さん、記者会見で自身が吹替した役の名前を忘れる

米倉涼子「このたび…、名前を忘れちゃった!」

 女優米倉涼子(40)が22日、都内で映画「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(4月29日公開)のイベントに参加した。
 地球上の危機を救ってきたアベンジャーズのアイアンマンとキャプテン・アメリカの対立を軸に、2つのチームの戦いを描いたアクションエンターテインメント。前作「アベンジャーズ」シリーズなどに続き、米倉は超一流の暗殺者ブラック・ウィドウの日本語版声優を務める。
 この日、小走りで登壇した米倉だったが、あいさつで「このたび…、名前を忘れちゃった!」。同作に登場するキャラクターたちが直前に紹介されたこともあり、「復唱していたら、(ブラック・ウィドウという)自分の名前を忘れちゃった」と照れ笑いを浮かべた。
3/22といえば4/29の公開を一ヶ月前に控えてファンが盛り上がっている時期だったので水を差すようなニュースが飛び込んできたな!という印象だったのを覚えています。

前書いた記事でも触れましたが米倉涼子さんはジョス・ウェドン監督に「私も出演させて下さい」と直接オファーしたり自分の吹替を見て「そこ失敗したな~」と言ったりと自由奔放な発言が多くて見ているこっちがハラハラしてしまいます。

ご多忙の米倉涼子さんが自身が4作続けて担当してきた役の名前をとっさに忘れてしまうのは仕方ないとしても、これを「どう?面白いニュースでしょ?」と言わんばかりに記事タイトルに入れる報道各社のセンスには驚かされました。

米倉涼子、挨拶で役名をド忘れ! 『シビル・ウォー』でブラック・ウィドウ役を続投



こちらの記事をよく読むと製作総指揮のネイト・ムーア氏の目の前での発言だったことが判明してさらに肝が冷えます。


③マーベルカフェ渋谷が映画公開前に終了

「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」渋谷に初上陸!”マーベル・カフェ”限定オープン!!

ヒーロー達をイメージしたスペシャルメニューも今回のマーベル・カフェで登場するということで、その内「スッパイダーマンサラダ」、「シビレル・ウォー!ステーキ」を宮迫さんが、「キャプテンアメリカンリゾットカレー」、「アイアンマンゴーパフェ」を溝端さんが実食し、その感想を宮迫さんは、「(ネーミングについて)大人の方が一生懸命考えていただいたようで(笑)マーベル・カフェというの関係なく、レベルの高い料理にびっくりしました。普通に料理として楽しんでしまいました。」と、ネーミング、見た目、味の3拍子で楽しめるオリジナルメニューを大絶賛!
オープン 2016年3月31日(木)~4月13日(水)
味わい深いメニューのネーミングにも目が行きますが4/13という中途半端な終了日に目を見張ります。おそらくその後のマーベルカフェ大阪オープン(こちらは4/22~5/8)に合わせて日程調整した結果だと思うのですが2週間は短すぎる気もします。実際にアメコミファン・映画ファン+一般層が短い期間に殺到したのか最長3時間という待ち時間の時もあったそうです。まあ、地方在住者には関係のないことですが。


④入場特典が週刊少年マガジン作品とコラボしたポストカード

少年マガジン3作品で“シビル・ウォー”ぼっ発!?人気漫画家の書き下ろしビジュアル公開
 
マーベル・スタジオの新作「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」の公開を記念し、「週刊少年マガジン」で人気連載中の「FAIRY TAIL」「ダイヤのA」「七つの大罪」が映画とコラボ。真島ヒロ氏、寺嶋裕二氏、鈴木央氏が、引き裂かれた友情によって仲間同士が激突する「“禁断の戦い”ビジュアル」を書き下ろした。 
人気漫画家たちが、自身の作品の登場人物たちを2チームに分け、映画のポスターと同じ構図で描写。「FAIRY TAIL」で魔導士たちのバトル×ファンタジーを描く真島氏は、企画に参加した理由を「リリーズのファンだったので!」と明かしており、高校野球を題材にした「ダイヤのA」の寺嶋氏も「シリーズのファンなので即答しました」。冒険ファンタジー「七つの大罪」の鈴木氏は、「マーベル好きだけでなく、大罪好きの方々にも楽しんでもらえたらいいなと思ったからです」と語っている。 
この書き下ろしビジュアルは、4月13日発売の「週刊少年マガジン」に掲載されるほか、入場者プレゼントのポストカードにも用いられる。プレゼントは映画の鑑賞チケット1枚につき1セット、「FAIRY TAIL」「ダイヤのA」「七つの大罪」のいずれかのビジュアルが封入される。全国70万セット先着限定で、なくなり次第終了となる。
先生方の喜びの声とは対照的にネット上では困惑が広がりました。参考:シビルウォーの入場者特典にマガジン連載漫画のポストカードが付いてくるぞ!人々「なんでや」

"マーベルのタイアップマンガはマガジンと契約してるからコラボするけどマーベルキャラは描いちゃダメ"という縛りの結果「構図だけ似せた関係ないマンガのポストカードが付いてくる」という不思議な感じになってしまったのは大人の事情とマーケティングとの妥協点という雰囲気が如実に現れていて日本の映画宣伝はこうでなくちゃ!と思わず唸ってしまいました。

しかしそんなポストカード一枚でシビル・ウォーに興味がない人も来るのかしら…と思いましたがキャラグッズ目当てにコンビニの商品を買い占めたりキャンペーン当日の深夜にコンビニに突撃する人もいるような昨今ではわりと勝算のあるマーケティングなのかなと思いました。



⑤公開前に金曜ロードSHOW!がアメージング・スパイダーマン2作を地上波放送

金ロー、『アメイジング・スパイダーマン2』地上波初放送!「2週連続 スパイダーマン祭り」

人気No.1ヒーロー・スパイダーマンが登場する話題作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が、4月29日(金)に公開される。これを前に今回、22日(金)より「金曜ロードSHOW!」にて、「2週連続 スパイダーマン祭り」が放送されることが決定した。 
今回放送することが決定したのは、世界中で愛されるスーパーヒーローの今まで語られなかった“誕生の秘密”を描き、全く新しい革新的なイメージを打ち出した、新スパイダーマン第1弾となる『アメイジング・スパイダーマン』を4月22日(金)に、そして一昨年公開され全世界で記録的な大ヒットとなった、新たな3大強敵が立ちはだかるシリーズ最新作『アメイジング・スパイダーマン2』は翌週29日(金)に地上波初放送される。また『アメイジング・スパイダーマン2』は、大人から子どもまでより多くの人々に楽しんでもらえるよう、放送時間を1時間余り繰り上げ、本編ノーカットで放送するようだ。
わーいアメスパだー!マーク・ウェブ監督好きー!うれしいなーと思う一方で「っていうかシビル・ウォーやるんだから前作のエイジ・オブ・ウルトロンをやるべきじゃね?もしくは2週連続キャプテン・アメリカ祭りにした方がよくね?」という疑問が沸々と湧き上がります。そんなキャップの過去作を愛するファンたちの神経を逆撫でするような金ロー公式のツイートでさらに火の手が上がりました。当時僕もあまりにもひどいと怒りましたがまあ今となっては新しいトム・ホランドのスパイダーマンがとにかく素晴らしかったので笑い話の一つという感じになりました。


喧嘩を仲裁する男、スパイダーマッ!

よく考えたら僕もシビル・ウォー見に行った時スパイディーTシャツで行ってたわ



⑥日本版イメージソングにEXILE ATSUSHI

「シビル・ウォー」日本版イメージソングはEXILE ATSUSHIが担当

「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の日本版イメージソングが、EXILE ATSUSHIの「いつかきっと…」に決定した。 
日本人アーティストとして初めて「アベンジャーズ」シリーズのイメージソングに起用されたATSUSHIは、「この『いつかきっと…』という作品は、約5年前、当時のソロの駆け出しの時に本当に心を込めて作った楽曲だったので、そのテーマが今回のこの映画にぴったりはまって起用されたということを、本当に嬉しく思います」と喜びを語る。さらに「『いつの日か』という理想を求める気持ち、そういう希望や理想を捨てちゃいけないなという気持ちは、僕の中にも強くあります。希望を持ち続けていたいという思いが、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』と『いつかきっと…』に、強く通じる思いだと感じています」とコメントを寄せた。 
なおこのたびYouTubeにてテレビスポットも公開。本編映像にあわせ、彼の提案により新たなアレンジが施された「いつかきっと…」をいち早く聴くことができる。

いやあ何度見てもすごい。この企画を通した人にハルクを送り込みたい。
「まさかこれがエンドロールで流れるのでは…」とネット上では戦々恐々とした雰囲気になりましたが、無事オリジナルのエンディングソングが流れることがわかりホッと安堵しました。というかなんでこんなことで戦々恐々としなければならないんだ。

この動画はYouTubeで全世界に配信されたため日本国内の洋画に関するおもしろ宣伝、言うなればお・も・て・な・しの精神がワールドワイドに幅広く認知されたようです。参考:『シビルウォー』日本版TVCMに映ったスパイダーマンに海外ファン歓喜!EXILEのテーマ曲には「fucking music」「シビルウォーをダサくしてくれてありがとう」

とにかく我々の気持ちは映像内でトニーが代弁してくれています。



⑦ジャパンプレミアのレッドカーペットイベントが中止

【重要】「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」ジャパンプレミア中止のおしらせ

これは本当に仕方のないことなのですがイベント数日前に発生した熊本大地震の影響でジャパンプレミアは中止、試写会のみとなりました。やはりこういうことがあるたびに映画やエンタメでワーキャー言ってること自体平和で幸せなことなのだな、と感じます。被災された方々も一日も早くワーキャー楽しめるようになってほしいと願います。


というわけで備忘録的な感じで書きました。どうですか。
あまり多くは言いません。普通に映画が公開されて普通に映画が見れることは本当は幸せなことなのです。だから普通に映画を公開して普通に見させて下さい。


とは言っても映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』は本当に面白い映画です。映画の周辺のことでやきもきすることもありますが映画を見終われば全て忘れてすっきりした気持ちになれますよ。



宣伝が、宣伝を引き裂く。
でもその後は さ、洗い流そ。

2016年5月12日木曜日

オレだって映画宣伝だぜ!! ~知られざる宣伝活動の世界

こんにちは。ビニールタッキーです。

前回『この映画宣伝がすごい!2015』というエントリを書きました。

この映画宣伝がすごい!2015(前編)
この映画宣伝がすごい!2015(中編)
この映画宣伝がすごい!2015(後編)

そこではいわゆる海外映画の、あらゆる意味で"すごい"公開記念イベントを取り上げました。しかしそれ以外にも前売り券特典や日本オリジナルポスター等々、映画に関する様々な宣伝活動が存在します。ここではそれら宣伝活動の世界の一部をご紹介します。

以下にご紹介する物件は僕が趣味で集めている「おもしろ映画宣伝」のサブジャンルではあると思うのですが僕もヒマではないので集めていません。というか数が膨大すぎて集められるかこんなの!誰か収集してくれ。または収集されてる酔狂な方をご存知でしたら教えて下さい。

・前売り券特典
こちらは2014年の傑作ディザスター映画『イントゥ・ザ・ストーム』の前売り券特典です。映画本編の緊張感とはかけ離れた牧歌的なデザインが胸を打ちます。僕はこれがきっかけで前売り券特典に興味を持ちました。

さらに実物を見るとかなりショボ…シンプルなデザインで泣けてきます。

前売り券特典の3強といえば「ボールペン」「ハンカチ」「ストラップ」というのはみなさんご存知でしょう。特に変なボールペンはかなりありがちです。昔親戚がグァム旅行のおみやげとしてくれた微妙なギミックの付いたボールペンを思い出します。

一時期は前売り券特典といえば携帯クリーナーというぐらい一大ブームでした。やっぱり前売り券を購入するような熱心な映画ファンの家には携帯クリーナーが大量にあったりするのでしょうか。


なぜアイマスク…あっ!眠れる森の美女だからか!

実はこの手の特典は映画の規模の大小、ジャンルに関係なく大量生産されているので『別冊映画秘宝 何これ!いらない!とりあえずもらっとく!前売り券特典の世界』というムック本が一冊出せるぐらいのジャンルだと思っているのですが誰かやってくれませんかね。


・ポスター
いわゆる「ダサポスター」と呼ばれる日本版オリジナルポスターも味わい深いものです。これは実際にNAVERなどでまとめられていることが多いのでとても助かっています。個人的には世界各地でそこに住む人たちが好むデザインというものがあり、それに合わせてデザインしているだけなので、その結果日本版ポスターがダサくなるということは我々自身がダサいから、という風に考えています。

それよりも最近微妙にブームになっている「コラボポスター」の方が相当やばいと感じております。


どうリアクションしたらいいのか本当にわからない。

実はこのコラボポスター、海外でも人気のようで例えばスポンジボブやデッドプールが有名映画のパロディをやってる画像などが見られます。それはそれで楽しい物なのですがここ日本では合体事故というか、一体それとそれをどうして組み合わせることになったんだという物件がほとんどで、スポンサーや利権など裏の事情を読み取る頭脳ゲームのような味わいがあります。


何も言えねえ。


はい…


別の映画のキャッチコピーを拝借する荒業!


・企業コラボ

猿の惑星続きですいません。しかしこれは何度見てもすごい。


ロン・ハワード監督は日本での宣伝方法に一度何か言ったほうがいい。


『フューリー』は「こんなハードな内容じゃブラピ主演でも客こねえよ」と判断したのかガルパンや艦これともコラボしていました。





・来日俳優のバラエティ番組出演

来日中の俳優が朝の情報番組やバラエティ番組に出るのも宣伝活動の一環です。お笑い芸人が日本人俳優と同じような扱いでイジったり、和風なお土産をプレゼントしたり、「日本に来て行きたい場所は?」「好きな日本料理は?」と聞くのが慣わしとなっております。


しかし朝の情報番組(めざまし、ZIP等)は逐一情報をチェックしないと誰がいつ出るかわからないため、ツイッターで有志によるキャプチャで知ることがほとんどです。そのためとにかく集めづらい。


こういうのホント誰か集めてほしい…


この他にもツイッター公式アカウント(キャラクターなりきりアカウントから感想をRTしまくって顰蹙を買うアカウントまで様々)や公式ハッシュタグ(例:#マッドマックスヤバい #クリード激アツ #くじらでかい)等々ありますがだんだんめんどくさくなってきたのでここらへんで終わりにします。


前回『この映画宣伝がすごい!』を読まれた方が「映画宣伝ってこんなにあるのかよ…」と嘆いている様子を見かけましたが、あんなものは氷山の一角に過ぎません。あの手この手の宣伝活動は山ほどあります。その何%が映画の興行収入に貢献しているかはわかりませんがね。

というわけで誰か集めてくれ!!